転職エージェントや人材会社に「求人を生み出させる」戦略

「応募したい求人が見つからない」と感じたときに、「自分が応募したい求人を作り出す」方法が存在します。

そんなことが本当に可能なのかと疑問に思う方も多いでしょう。

しかし、これは可能です。

そもそも、就職活動とはコネがない限り、自分自身を売り込む活動です。履歴書や職務経歴書、面接といった手段はそのためのツールに過ぎません。これらのツールはみんなが同じように使いますが、他のツールを活用して自分をアピールすることも十分可能です。それが再就職活動での新しいアプローチとなります。

企業のホームページから直接応募する戦略

 

以前に、「企業のホームページから直接応募する戦略」について触れたことがあります。この方法は、求人情報を探す際にあまり知られていない手段だからです。

多くの人は「効率的」に求人に応募したいと考え、求人サイトで検索を行いますが、実は今の検索エンジンは非常に優秀です。上手に使えば、企業のホームページに掲載された中途採用の情報を簡単に見つけることができるのです。

ただし、この方法はあくまで「ホームページ上で求人を掲載している企業」に応募する方法です。

求人を行っていない企業に対しては、「求人を生み出させる」というアプローチが必要になります。だからといって、直接電話をかけて「採用しませんか?」と聞くわけにはいきません。(非常に効率は悪いですが、全くの無駄とも言えません…)

求人を生み出す方法

では、具体的にどのようにして「求人を生み出す」のかについてです。

その手段として利用するのは、「転職エージェントや人材紹介会社」です。

ただし、ここでの「転職エージェント」に、大手の転職サイトに属するエージェントは含みません。というのも、彼らは求人を探すチームとは別の役割を担っているからです。大手では「求人を探す担当者」と「求人を紹介する担当者」が明確に分かれており、その方がビジネスとして効率的だからです。

このように役割分担がないのは、中小の人材紹介会社です。インターネットで目にする様々な人材会社の多くは、実は全体のごく一部に過ぎません。平成28年11月の厚生労働省職業安定局の資料によれば、有料職業紹介事業所は全国で17,893カ所あり、そのうち約半数が東京・大阪・愛知に集中しています。「個人経営」の小規模な会社も存在しますが、全体のほとんどが中小企業であることがわかります。

中小人材会社の効果的な利用法

中小の人材会社は、他とは異なる独自の方法で動いています。まず、「採用候補者のリスト」を持っているわけではありません。そのため、「大手転職サイト」や「ネット検索で見つかる人材サイト」のリストを使って、自社の求人に適合しそうな人材を見つけ出し、投資をしてリストアップします。そして、見込みのある人材を見つけたら、アポイントを取り、自社の求人にマッチする人材として提案します。良い人材を見事に売り込めば、報酬が発生するだけでなく、求人を出している企業から「良い人材を提供してくれる会社」として信頼を得ることができます。

大手の転職サイトでは、「こんな求人もありますが、どうですか?」と幅広く求職者にアプローチしてきますが、中小の人材会社はよりピンポイントでターゲットを絞ります。彼らの「人材リスト」から候補者を探し出すためにはコストがかかり、採用が決まらなければ「損失」となるため、この作業は投資とみなされます。

こうした中小の人材会社を信頼している企業は、「大手よりも中小の方が良い人材を紹介してくれる」と考え、彼らを積極的に利用しています。

もし中小の人材会社が「現在募集していない職種」に人材を紹介してきたらどうでしょうか?多くの企業は「会ってみてもいいかもしれない」と考えることでしょう。なにしろ、信頼している人材会社からの推薦ですから。

実際、私の以前の職場でも、突然会社トップから「紹介したい人材がいるので、面談をしてほしい」という連絡があり、求人活動をしていないにもかかわらず、数回の面談が行われたことがあります。面接ではなく「面談」という形がポイントです。

当時、私は「コスト削減担当」として、会社トップが納得できるような「難解な質問」をして、判断力を試すことで、採用を見送る方向に持っていっていました。この「難解な質問」は、会社トップの得意分野に関連させることで、「確かに判断力が不足している」と感じさせる手法でした。人材会社の反応も興味深く、「この人、ありえない質問をしてきたな」と感じたことでしょう。

しかし、もし相手が「会社トップに素直に従うタイプ」であれば、採用されていたかもしれません。

なぜ面談が実現したのか

「募集していない職種での面談」はなぜ起こったのでしょうか?それは、「信頼している人材会社から推薦された人材」だったからです。

通常、求職活動では「募集していない職種や会社」に応募することはできません。求人情報にはそのような募集が掲載されていないからです。

それにもかかわらず面談が行われたのはなぜか?その理由の一つとして、中小の人材会社は「同じ業界の企業にネットワークがある」ことが挙げられます。例えば、「製造業」と一括りにされることが多いですが、私が所属していた「印刷業」など、製造業の中でもさらに細分化された業界に特化している人材会社も存在します。これは彼らの得意分野といえるでしょう。

「その業界をよく知っている」→「適切な人材を紹介できる」という流れが生まれます。

人材の確保方法

中小の人材会社が人材紹介を依頼された際、自社で豊富な人材リストを持っているわけではありません。そのため、「大手サイトの登録者リスト」から適切な人材を探し出します。彼らが「大手サイトのリスト」から選んだ人材は、ある意味で商品として扱われます。費用をかけて手に入れた人材ですから、採用が決まらなければ「在庫」となってしまいます。

「在庫」となった人材は売り込まなければ、利益にはつながりません。同じ業界の他の企業に提案することが、ここで役立ちます。「在庫の人材」は、同業他社にも紹介され、求人が出ていればそのポジションに対して、出ていない場合でも「このような人材がいます、一度面談してみませんか?」と提案されます。

私もDODAに登録した際に、聞いたことのない人材会社から連絡を受け、大手の印刷会社の面接をセッティングされた経験があります。

自分でアプローチする

もう一つのケースとして、求職者自身が「中小の人材会社にアプローチした」可能性もあります。中小の人材会社は、自社の持つ求人を「人材バンク」などのサイトで公開しています。ここから応募すれば、企業側もコストを抑えて人材を確保できるという利点があります。これらのサイトでは、どの人材会社が登録されているか、またその担当者の得意な業種や専門分野も確認できます。

例えば、「印刷業の生産管理職」を探している場合、「印刷業」「生産管理」と検索すると、表示される求人は限られますが、「印刷業」だけで検索すれば、より多くの求人が見つかるかもしれません。多くの求人を扱っている人材会社や担当者が見つかれば、その担当者に直接アプローチすることができます。

希望する職種に近い求人が見つかれば、そのまま応募して連絡を取りましょう。希望する職種がない場合でも、関連する求人に応募することができます。この応募ボタンは人材会社の担当者に直接つながり、相手が興味を持てば連絡が来るでしょう。ここから来る人材は「低コストで仕入れられる人材」として注目される可能性があります。

連絡が来たら、希望や現状、そしてその業種・職種でのスキルや資格を伝えます。(可能であれば、応募時点でこれらの情報を記載しておくと良いでしょう)

私の経験では、年間500人程度しか取得しない「防炎加工専門技能士」という特殊な資格が、予想以上に注目されました。

業界に精通している担当者であれば、適切な提案先も把握しており、上手く活用すれば「存在しなかった求人」を作り出すことができるのです。