【体験記】 50代でのキャリア変更の現実。


この記事を執筆する過程で、改めて振り返ってみると、筆者は30年以上にわたる社会人生活で6回の転職を経験し、合わせて9社で勤務してきました。10年以上勤めた8番目の会社を最後にする予定でしたが、人生は予期せぬ展開を見せ、55歳を過ぎて再び転職市場に足を踏み入れることとなりました。30代や40代の時には自信もあり、比較的短期間で新しい職場を見つけることができましたが、50代での転職は想像以上に困難でした。

 

55歳で前職を離れ、現在の9番目の会社に到達するまでには56歳近くになりました。転職活動には約1年を要しました。

 

幸運にも素晴らしい会社に出会うことができ、現在では「もしかしたらこれが本当の天職だったのかもしれない」と考えるようになりましたが、転職活動中は一筋縄ではいかない状況に耐え、救援を待つかのような心持ちで過ごしました。

 

現在は望ましい仕事に恵まれ、若い頃に比べて働く喜び、働ける喜びを実感しています。

 

このブログでは、人生の中でも「働くことの楽しみ」が非常に大きいと感じています。1年に及ぶキャリアの空白期間を経て、働くことの意味を再確認しました。

 

この記事を通じて、特に50代やそれ以上の年齢の方々、そして現在転職を検討されている方々に少しでも参考になればと思い、50代の転職に特化して書いてみました。最近は40代の転職も困難を増しているとのことで、この記事が40代の方にも役立つと考えています。

 

50代以降の転職は特に困難が伴いますが、それを乗り越えた先には「働く楽しさ」を体験する新しい生活が待っています。その道のりの真実と実際の事情をありのままに伝えたいと思いますので、ご参考にしていただければ幸いです。

【突然の変化】転職の現実が見え始める瞬間

 

年齢を重ねると共に、多くの方が自分のキャリアに一定の自信を持っています。これまでの経験、成功も失敗も含めて、自身の人生と仕事の歴史に深く刻まれています。特に50代に入ると、安定した収入と貯蓄があり、長年の努力が認められることを期待し、比較的穏やかな生活を送っている人が多いでしょう。

 

しかし、予期せぬ事態が発生し、突然転職を考えざるを得ない状況になることもあります。特に人事異動が、新たな章の始まりとなるケースがよくあります。異動により部署や上司が変わり、以前の平穏な職場環境が一変することは珍しくありません。新しい環境でのストレスが増え、場合によっては耐えがたい状況になることも。

 

特にシニア層で、長年確立された地位にある場合、不一致が生じた新しい上司によって、重要なポストから外されたり、職務評価が低下したりすることもあります。その結果、減給や役職の喪失を経験することが多く、「現実を受け入れる」のが一筋縄ではいかなくなります。

 

私自身、以前は転職支援を行う企業に勤めており、多くの求職者が突然の変化や不公平な扱いに直面しているのを目の当たりにしました。パンデミックが進行する中で、特にシニア世代への不利な人事異動が増えているようです。これは、社内コミュニケーションの低下や個々の実績が過剰に重視されるようになったためと考えられます。

 

このような状況下で、転職を余儀なくされる場合、多くの人は転職サイトやエージェントに登録し、新たな職場を探し始めます。若年層と比較して、50代以降の転職市場は厳しいものがあり、スムーズに内定を得ることは難しく、長期化する転職活動が現実となります。

 

50代の転職活動で味わう「自己評価の崩壊」

 

厳しい現実は、転職活動の過程で次第に明らかになっていきます。

 

まず最初に、複数の転職サイトやエージェントに登録しますが、これが予想以上に手間のかかる作業です。各サイトでフォーマットが異なるため、職務経歴書をひとつ作っても、それをコピーして貼り付けるだけでは済みません。仕事の合間や休日に、時間をかけて登録作業を行いますが、多くの方にとっては精神的な負担が大きく、すべてのサイトに登録を終えるまでには相当な忍耐が必要です。これが最初に直面する「現実の壁」です。

 

登録が完了すると、その日のうちに転職サイトから案内メールが届きます。1つのサイトから1日に1通、5つのサイトに登録すれば1日に5通。それが複数日続くと、メールボックスはすぐにいっぱいになります。毎日のように「あなたにマッチした求人」「高収入の求人」などのタイトルで山のようなメールが届きます。中には「企業があなたに興味を持っています」といった応募の勧誘メールもあります。

 

長年同じ会社で働いてきた方や、昔の転職活動しか知らない方にとって、これらのメールは驚きかもしれません。「この年齢でもニーズがあるんだ」と一瞬喜ぶこともあるでしょう。しかし、その後、案内メールに目を通す時間が増え、応募を迷う案件が出てくると、その検討に時間を費やすようになります。エージェントからアドバイザーとの面談の案内が来るかもしれませんが、50代以降の求職者にはそもそも面談の機会が少ないこともあります。面談ができても「紹介できる案件が現時点でない」と言われることが多く、これはエージェント企業が持つ求人案件に自分がマッチしていないことを示しています。その時点では、諦めて次を待つしかありません。

 

ここまで来ると、転職活動が具体的に動き出した実感があるかもしれませんが、これが次の「現実の壁」です。

 

転職活動を開始して1〜2週間、あるいは1か月ほど経つと、「これは良さそうだ」という求人案件が見つかります。「仕事内容が自分に合っているし、これまでの経験も活かせそうだ」と感じ、企業のホームページや評判を確認し、問題がなさそうであれば応募します。エントリー後は返事を待つ日々が始まり、面接に向けた準備をしながら毎日スマホを確認します。しかし、数日後、待ちわびた通知が届きますが、その内容は「残念ながら今回はお見送りとなりました」というもの。

 

これが最初の不採用通知です。書類選考で不合格になると、応募した企業が求めているものと自分が提供できるものとのギャップを強く感じることでしょう。この段階で、50代の求職者が抱く自己評価が音を立てて崩れ始めます。これが次の「現実の壁」です。

 

続いて、2回目の不採用通知が届きます。これがさらに深刻な「現実の壁」です。この時点で、多くの場合、転職活動のゴールが見えなくなります。それでも走り続けなければならず、同じプロセスを繰り返し、次第に焦りが募ります。そして、より厳しい条件の中で新たな職務経歴書を作成し、再び応募を続けますが、またもや不採用通知が届く。これを何度も繰り返すうちに、次第に転職の意欲が低下し、最初に抱いていた希望は失われていきます。

 

最終的に、多くの50代の求職者は、自分のキャリアに対する「自己幻想」が崩れ、転職活動に疲れ果ててしまうことが少なくありません。転職を諦めて現職に留まるか、退職して失業手当や退職金に頼る選択肢しかなくなってしまうことも。

 

もちろん、良い転職先が見つかりスムーズに進む例もありますが、50代の転職は非常に厳しい現実に直面する可能性が高いという覚悟を持って臨むことが必要です。

 

50代の転職における市場ニーズの理解と新しい職業観の採用

 

50代の転職活動が厳しい現実に直面することは多いですが、不可能ではありません。実際に多くのシニア転職者が新たな職場で活躍しています。

 

転職活動が長期化し、多くの挑戦を伴うことは確かですが、新しい職業観を持って臨むことで、遠回りせずに望ましい転職を実現する方法があります。

 

重要なのは、これまでの職業観やプライドを一度棚上げし、希望する年収を含めた現実的な再評価を行うことです。その上で、新しい職業観を持ち、しっかりとしたキャリアプランを立てることが求められます。

 

たとえば、自分の経歴やスキルが市場でどう評価されるかを客観的に分析し、求人市場での自分の立ち位置を理解することが重要です。40代以降の転職では、自分の市場価値を的確に見極め、キャリアの棚卸を行うことが成功への鍵となります。

 

また、ニーズの所在を正確に把握し、その上で自分のライフスタイルや将来の職業観に合わせた転職活動を計画することが重要です。自分がこれまで積み上げてきたキャリアをどのように活かすかを考えるだけでなく、どの業界や地域に需要があるかを見極めることも必要です。

 

仕事と自己認識の関連性を再考し、仕事が自己アイデンティティの全てであるという観点から脱却することも重要です。これにより、自分のキャリアに対する新しい理解や、仕事に求める価値観が変わることで、新しい職業観が形成されます。

 

さらに、他者の意見を積極的に聴取することで、自分では気づかない新しい視点や可能性を発見することができます。配偶者や友人、職場の同僚など、身近な人々の意見を聞くことで、自分の考えに確信を持つことができるでしょう。

 

最終的には、転職市場での自己の位置を正しく評価し、新しい職業観を基に計画的に転職活動を進めることが、50代の転職を成功させるための最良のアプローチです。